今回は皮膚科専門医として、日々多くの患者さんと接する中で感じる、口唇炎の本当の原因と、あまり知られていない正しいスキンケアの極意についてお話しします。診察室を訪れる患者さんの多くが「何を塗れば治りますか」と質問されますが、私はまず「何を塗るのをやめますか」と問い返します。というのも、現代の口唇炎の多くが、過剰なケアや誤った製品選び、つまり「やりすぎ」によって引き起こされているからです。口唇炎の主な原因は、実は皆さんの洗面所やポーチの中に隠れています。例えば、唇をふっくら見せるプランパー効果のあるリップや、長時間落ちないティントリップ。これらに含まれるトウガラシ成分や合成染料は、唇の粘膜にとっては非常に強い刺激物であり、細胞のバリアを破壊してしまいます。また、オーガニック製品だから安心という思い込みも危険です。天然由来の精油やエキスこそが、強い接触性皮膚炎の原因になることは珍しくありません。診察の際、私は患者さんの唇だけでなく、顔全体のスキンケア方法も確認します。洗顔料の泡が唇に残ったままになっていないか、クレンジングで唇をごしごし擦っていないか。こうした日常の些細な摩擦が、口唇炎を慢性化させる物理的原因となっているのです。唇の皮膚はたった3日から5日で生まれ変わる、非常に代謝の速い組織です。つまり、原因さえ取り除けば、本来はすぐに綺麗になるはずなのです。私が推奨するケアの極意は「徹底したシンプル化」です。炎症が起きている時は、薬用の高価なクリームも、美容成分たっぷりのパックも不要です。不純物を極限まで除いたサンホワイトのような高品質なワセリンを、指の温度で温めてから、優しく置くように塗る。これだけで十分です。そして、内側からの原因についても忘れてはいけません。唇は消化管の入り口です。暴飲暴食や胃もたれはダイレクトに唇のコンディションに現れます。特にビタミンB群の不足は致命的ですので、豚肉や玄米、バナナなどを積極的に摂るようアドバイスしています。また、現代人に多い「スマホを見ながらの猫背」も、実は口呼吸を誘発し、唇を乾燥させる隠れた原因になっています。姿勢を正し、鼻で呼吸し、清潔な手で最低限の保湿を行う。この基本に立ち返ることが、口唇炎のループを断ち切る唯一の方法です。口唇炎は体質だからと諦める必要はありません。原因を正しく理解し、引き算のケアを実践することで、誰でも必ず健康な唇を取り戻すことができるのです。
専門医が語る口唇炎の原因と正しいスキンケアの極意