特に虫歯があるわけでもないのに、仕事が忙しかったり、強いストレスを感じたりすると、なぜか歯が浮いたように感じたり、鈍い痛みが出たりすることがあります。これは、心身のコンディションが口内の健康に密接に関わっている証拠です。ストレスや疲労は、私たちの体に様々な影響を及ぼしますが、その一つが免疫力の低下です。免疫力が下がると、普段は抑えられている歯周病菌などが活発化し、歯茎に炎症を引き起こしやすくなります。これが、歯が浮くような感覚や鈍痛の原因となるのです。また、ストレスは無意識のうちに歯を食いしばったり、夜間に歯ぎしりをしたりする原因にもなります。この行為は、歯や顎に想像以上の大きな負担をかけます。強い力が継続的にかかることで、歯がすり減ったり、ひびが入ったりするだけでなく、歯の根を取り巻く歯根膜が炎症を起こし、痛みを感じることがあります。朝起きた時に顎がだるかったり、歯に違和感があったりする場合は、就寝中の食いしばりや歯ぎしりを疑ってみる必要があるでしょう。さらに、ストレスは唾液の分泌量を減少させることも知られています。唾液には、口の中の細菌を洗い流し、酸を中和する大切な働きがあります。その唾液が減ることで、口内環境が悪化し、虫歯や歯周病のリスクが高まってしまうのです。このように、歯の痛みは必ずしも歯自体の問題だけが原因とは限りません。それは、体全体が発している疲労やストレスのサインかもしれません。歯のケアと同時に、十分な休息をとり、リラックスする時間を作ることが、結果的に口内の健康を守ることにもつながるのです。