下唇の口内炎は非常にありふれた症状であるため、多くの人が市販薬で対処したり、自然に治るのを待ったりしているのが現状です。しかし、歯科医師の立場から見ると、その自己判断にはいくつかの注意点があります。特に、同じ場所に繰り返し口内炎ができる場合、それは単なる体調不良や不注意ではなく、お口の中に根本的な原因が潜んでいる可能性が高いのです。例えば、歯並びの問題です。特定の歯が内側に傾いている、あるいは捻じれて生えていることで、下唇の粘膜を常に刺激し、傷つきやすい状態になっていることがあります。また、治療した詰め物や被せ物の縁がシャープになっていたり、不適合であったりして、それが唇に当たって慢性的な刺激源となっているケースも少なくありません。自分では気づかないような、歯のわずかな欠けや尖った部分が原因であることもあります。このような物理的な原因が存在する場合、いくらビタミンを摂ったり、しっかり睡眠をとったりしても、根本的な解決にはなりません。刺激源を除去しない限り、口内炎は何度でも同じ場所に再発します。私たちは、患者さんの口内炎を診察する際、ただ患部を見るだけでなく、その周囲の歯の状態や噛み合わせ、舌や唇の動きの癖まで、総合的にチェックします。そして、もし歯に原因があれば、尖った部分を丸める、不適合な修復物をやり直すといった簡単な処置で、長年の悩みだった再発性口内जनबी炎が劇的に改善することがあるのです。たかが口内炎と侮らず、もし頻繁に繰り返すようであれば、一度プロの目で原因を探ってもらうことをお勧めします。それは、つらい痛みから解放されるための、最も確実な近道かもしれません。