私たちは日々、患者さんのお口の中を拝見していますが、「下の歯って、全部で何本あるのが普通なんですか?」という質問をいただくことが時々あります。この素朴な疑問は、ご自身の口腔健康に関心を持ち始めた良い兆候だと感じます。専門的な視点からお答えすると、まず成人の永久歯の場合、下の歯の基準となる本数は14本です。これは親知らずを含まない数で、多くの方がこの本数に該当します。この14本が上下の歯としっかり噛み合うことで、私たちの食べる、話すといった機能が支えられています。ここに、最も奥に生える親知らずが加わると話は少し変わります。下の親知らずは左右に最大2本生える可能性があり、これがすべて正常に生えそろうと、下の歯の合計は16本になります。ですから、14本から16本の間であれば、それは正常な本数の範囲内と言えるでしょう。一方で、時々この範囲に当てはまらない方がいらっしゃいます。例えば、生まれつき歯の本数が少ない「先天性欠如」の方です。下の前歯や小臼歯によく見られ、レントゲンを撮ると永久歯の芽が存在しないことがわかります。逆に、本来の歯の数よりも多く歯が存在する「過剰歯」というケースもあります。これは下の前歯の間などに小さな歯として現れることが多いです。これらの歯は、歯並びを乱す原因となるため、抜歯が検討されることもあります。このように、下の歯の本数には個人差がありますが、大切なのはその本数そのものよりも、それぞれの歯が健康で、全体の噛み合わせがしっかりと機能しているかどうかです。ご自身の歯の本数が気になったら、ぜひ定期検診の際にでも、お気軽に私たち歯科医師にご質問ください。