昼間はそれほど気にならなかったのに、夜、ベッドに横になるとズキズキと歯が痛み出す。そんな経験をしたことがある人は少なくないでしょう。なぜ、リラックスしているはずの夜間に限って、歯の痛みは強くなるのでしょうか。これには明確な理由があります。最も大きな要因は、体の姿勢の変化による血流の増加です。立ったり座ったりしている日中は、血液が重力に従って足元へ流れやすくなっています。しかし、横になると頭部への血流が増加します。歯の内部には、神経や血管が密集している「歯髄」という組織があります。虫歯などが原因でこの歯髄が炎症を起こしていると、頭部への血流が増えることで血管が膨張し、内部の圧力が一気に高まります。この圧力が神経を強く圧迫するため、日中よりも激しい痛みとして感じられるのです。つまり、痛みが夜に始まったわけではなく、もともとあった炎症が、横になるという行為によって顕在化したと考えるのが自然です。また、夜は日中のような活動や刺激がなく、静かな環境で自分の体に意識が向きやすくなるため、痛みをより敏感に感じてしまうという心理的な側面も関係しています。さらに、入浴も痛みを誘発する一因となり得ます。体が温まることで血行が促進され、歯髄の圧力が上昇し、痛みが強まることがあるのです。このように、横になると歯が痛む現象は、体からの重要なサインです。その痛みの裏には、治療を必要とする歯の問題が隠れている可能性が非常に高いと言えるでしょう。