それは、何の変哲もない普通の朝に起こりました。目覚まし時計の音で目を覚まし、いつものように洗面所へ向かう。鏡に映った自分の顔を見て、私は一瞬、時が止まったかのような感覚に陥りました。そこにいたのは、見慣れた自分ではなく、まるでマンガのキャラクターのように下唇だけが異常に腫れ上がった、見知らぬ人物だったのです。痛みもかゆみも全くありません。ただ、ぼってりと重く、熱を持っているような感覚だけがありました。何が起きたのか、頭が真っ白になりました。昨日の夜、何か変わったものを食べただろうか。いや、いつもと変わらない夕食だったはずだ。どこかにぶつけた記憶もない。新しい化粧品も使っていない。原因が全く思い当たらず、不安だけが心を支配しました。とりあえず、会社に連絡を入れ、事情を話して皮膚科へ向かうことにしました。待合室で待っている間も、周りの視線が自分の唇に集まっているような気がして、マスクを深くかぶって俯いていました。診察の結果、医師から告げられた病名は「クインケ浮腫」というものでした。アレルギーの一種だが、特定の原因物質がはっきりしないことも多く、ストレスや疲労が引き金になることがあるとのこと。確かに、最近仕事が忙しくて睡眠不足が続いていました。体は正直なもので、自分では大丈夫だと思っていても、見えないところで限界を迎えていたのかもしれません。幸い、数日で腫れは引くでしょうと言われ、抗アレルギー薬を処方されて帰宅しました。この一件以来、私は自分の体の小さなサインを見逃さないように、無理をしないことの大切さを痛感しています。