加齢で歯並びは変わる?後戻りとその向き合い方
若い頃はきれいな歯並びだったはずなのに、年齢を重ねるにつれて、なんだか下の前歯が混み合ってきたように感じる。これは気のせいではなく、加齢に伴う自然な生理現象の一つである可能性があります。私たちの体が生涯を通じて変化し続けるように、口の中も例外ではありません。特に、下の前歯は加齢による変化が現れやすい場所として知られています。その原因の一つとして、長年の噛む力による歯の摩耗が挙げられます。歯は毎日何千回と噛み合うことで、少しずつすり減っていきます。特に奥歯がすり減ると、噛み合わせが全体的に低くなり、その影響で下の前歯が前方に押し出されて、混み合ってくることがあります。また、若い頃に矯正治療を経験した人に起こりやすいのが「後戻り」です。矯正治療で歯を動かした後は、歯が元の位置に戻ろうとする力が働きます。この力を抑えるために「リテーナー」という保定装置を使用しますが、その使用を怠ってしまうと、数年、数十年という長い時間をかけて、徐々に歯並びが元に戻ってきてしまうのです。この後戻りは、下の前歯で特に顕著に現れる傾向があります。さらに、加齢とともに歯を支える歯周組織も少しずつ変化し、歯が動きやすくなることも一因と考えられています。このように、加齢による歯並びの変化はある程度避けられない側面もあります。しかし、だからといって諦める必要はありません。定期的な歯科検診で噛み合わせをチェックしてもらったり、後戻りが気になる場合は再度部分的な矯正治療を検討したりすることで、悪化を防ぎ、美しい口元を維持することは可能です。大切なのは、変化に気づき、早めに対処することです。