歯が痛くて歯科医院に行ったのに、レントゲンを撮っても虫歯は見当たらず、特に異常はないと言われてしまった。そんな経験はありませんか。歯に原因がないにもかかわらず、歯が痛む場合、疑われる病気の一つに「副鼻腔炎」があります。一般的に蓄膿症とも呼ばれるこの病気は、鼻の周囲にある副鼻腔という空洞に膿が溜まることで起こります。特に上の顎にある「上顎洞」という空洞は、上の奥歯の根の先端と非常に近い位置関係にあります。そのため、上顎洞で炎症が起きると、その圧力が歯の神経を刺激し、まるで奥歯が痛んでいるかのような症状を引き起こすことがあるのです。これを「歯性上顎洞炎」とは区別して、副鼻腔炎が原因の歯痛と呼びます。この場合、痛みを感じているのは歯ですが、根本的な原因は鼻にあるため、歯科治療を行っても症状は改善しません。副鼻腔炎が原因の歯痛にはいくつかの特徴があります。例えば、風邪をひいた後やアレルギーの季節に痛みが始まった、頭を下げたりジャンプしたりすると歯に響く、鼻詰まりや色のついた鼻水、頭痛や頬の圧迫感を伴う、といった症状です。また、特定の歯一本ではなく、上の奥歯の複数が同時に痛むように感じることもあります。もし、歯科で異常なしと診断されたにもかかわらず歯の痛みが続く場合は、これらの症状がないかセルフチェックし、耳鼻咽喉科を受診することを検討してみてください。思わぬところに痛みの本当の原因が隠れているかもしれません。