横になると歯が痛むという症状は、体が発している見過ごしてはならない警告サインです。少し痛みが和らいだからといって、歯科医院への受診を先延ばしにしてしまうと、後でさらに深刻な事態を招きかねません。なぜ、この痛みを放置してはいけないのでしょうか。その最大の理由は、痛みの原因となっている歯の炎症が自然に治ることはほとんどないからです。例えば、痛みの主な原因である歯髄炎は、虫歯菌が歯の神経にまで達した状態です。これを放置すれば、菌はさらに奥深くへと侵入し、歯の根の先端に膿の袋を作ることがあります。こうなると治療はさらに複雑になり、抜歯に至るケースも少なくありません。さらに感染が顎の骨にまで広がると、顔が大きく腫れ上がったり、発熱を伴う「顎骨炎」という重篤な状態になる危険性もあります。また、痛みを感じるということは、神経がまだ生きている証拠でもあります。もし放置し続けて神経が完全に死んでしまうと、一時的に痛みは消えます。しかし、これは治ったわけではなく、病状が静かに進行しているだけなのです。気づいた時には手遅れで、大切な歯を失ってしまうことになりかねません。経済的な観点からも、早期発見、早期治療は重要です。初期段階であれば簡単な治療で済むものが、重症化すればするほど治療期間も長くなり、費用もかさんでしまいます。つらい夜を繰り返さないためにも、そして何より自分の大切な歯を守るためにも、横になると歯が痛むと感じたら、一刻も早く歯科医院の扉を叩くべきなのです。